先日、昨年(2024年)の日本の出生数(速報値)が発表され、過去最低の約720,988人であることが明らかになりました。
昨年末には「70万人を割るのではないか」との予測もありましたが、なんとか踏みとどまりました。2015年からの出生数の推移をみると以下の通りです。毎年減少を続けており、2024年の出生数は2015年と比べて約3割減少しています。

昨年実施した出生数の予測に対する答え合わせ
実は、ちょうど昨年の今頃、2023年までの出生数のデータをもとに、時系列分析を用いて2024年の出生数を予測していました。「状態空間平滑化モデル」、「ARIMAモデル」の2つの手法による予測結果を以下に示します。
2024年始めに行った2024年の出生数予測
実際の出生数は予測よりやや下振れしたものの、ある程度の精度で予測できていました。特に、状態空間平滑化モデルによる予測誤差はわずか-0.76%でした。
単に過去の出生数データのみで、ここまでの精度で予測できてしまったのです。しかし、日本の将来を考えると、この予想が良い意味で外れてほしかったのが本音です。現実問題として、政府の想定よりも早いペースで少子化が進んでいるようです。
出生数には季節要因が大きく影響するため、月ごとに予測しています。ここでは2024年の状態空間平滑化モデルによる出生数予測と実際の出生数とを比較してみます。

月ごとにみると、予測に対して実測が上振れするケース・下振れするケースが・ほぼ一致するケースがみられます。特に10~12月の3か月の合計では、予測値(180,293人)に対し、実測値(180,821人)は、わずかに上振れしました。これは今後に少し希望が持てる結果かもしれません。
JMPの時系列モデルを用いた2025年の出生数予測
2024年の出生数のデータが得られたため、状態空間平滑化モデルを用いて2025年(今年)の出生数の予測をしてみました。
昨年と同様、予測は、以下の2つのステップで行っています。
ステップ1 . 最も良いモデルの決定
- 2015年~2023年を学習データとして、季節、トレンド、誤差のバリエーションの組み合わせのうち19個のモデルをあてはめる。
- 2024年を検証(保留)データとして、あてはまりを評価する統計量(RMSE)を使い最適なモデルを決定する。

ステップ2. 決定したモデルを使って2024年を予測
ステップ1で決定した最適なモデルを2015年から2024年のデータに対してあてはめ、2025年を予測する。

この手順で求められた最適なモデルを用いた予測結果を以下に示します。図のオレンジ部分が2024年の検証データ、緑部分が2025年の月ごとの出生数予測です。

この結果から、2025年の出生数は686,798人と予測されました。これにより、出生数はついに70万人を割る見込みとなります。
少子化に歯止めはかかるのか?
この予測が示すように、2025年の出生数は70万人を下回る可能性が高いですが、一つ良い兆しを示すデータがあります。
昨年(2024年)の婚姻件数は、一昨年(2023年)と比べて2.1%増加(約1万人増)したことがわかりました。

こちらの婚姻件数には再婚も含まれているため、単純に婚姻件数の増加が出生数の増加に結び付くとは限りません。しかし、少しでも希望が持てるデータではあります。。
政府は少子化対策に本腰を入れていますが、その効果が問われているときでもあります。来年の結果でが今回の予想を良い意味で裏切ることができるよう、政府や地方自治体が連携し、子どもを産みやすく、育てやすい環境を整えていくことを願っています。
by 増川 直裕(JMP Japan)
Naohiro Masukawa - JMP User Community
※追記:Meta社が開発した時系列予測ライブラリ Prophet を使用したところ、2025年の予測値は 687,554人 となりました。これは、上記の状態空間平滑法モデルによる予測値と近い結果となっています。
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