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「MaxDiff計画」を用いたキャラメルポップコーンのおいしさ調査

「ポップコーンにキャラメルがかかっているだけで、こんなにおいしいなんて!」

筆者が初めてキャラメルポップコーンを食べたときの感動は今でも忘れられません。普段はあまりポップコーンを食べることはありませんが、キャラメルポップコーンだけは好んで食べています。

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スーパーにいくと、さまざまなキャラメルポップコーンが販売されています。いくつか試してみると、「これはおいしい!」と思うものや、キャラメル感が強いもの、味が控えめなものなど、それぞれに特徴があることがわかりました。

 

ちょうどその頃、JMPに「MaxDiff計画」という新機能が追加されました。「これはキャラメルポップコーンのおいしさを調べるために使えそうだ!」と思い、弊社(JMP Japan)の社員に協力をお願いし、調査を実施しました。かなり前の調査にはなりますが、その結果を報告します。

 

MaxDiff計画とは?

消費者調査では、「選択モデル計画(コンジョイント計画)」がよく用いられます。これは、複数の商品から最も良いものを選んでもらう調査手法です。

 

一方、「MaxDiff計画」では、提示された複数の商品から「最も良いもの」と「最も悪いもの」を選んでもらいます。た例えば、3種類のケーキが提示された場合、最も好きなケーキを1つ、最も好ましくないケーキを1つ選ぶという方法です。

Masukawa_Nao_0-1739949652289.png

 

MaxDiff計画は、選択モデル計画と比べて「最も悪いものを選ぶ」情報が含まれるため、商品の好みに関するより詳細な情報を得ることができます。

 

MaxDiff計画を用いたおいしさ調査

評価者:弊社社員9名

対象商品:8種類(商品A~H)のキャラメルポップコーン

 

以下が8種類の商品の概要です。JMPのデータテーブルに入力されており、以降、このテーブルを「調査テーブル」と呼ぶことにします。

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※意図的に商品の写真をぼかしています。

 

調査では、以下の手順で評価を行いました(下記、調査票を参照)。

 

  1. 各評価者に8つの商品から3つ(集合1)を提示し、それぞれを試食してもらう。
  2. その3つの中で、
    • 最もおいしいと感じたもの、最もキャラメル感が強いと感じたものを選択。
    • 最もおいしくないと感じたもの、最もキャラメル感が弱いと感じたもの
      を選択。
  3. 別の組み合わせ(集合2)で再度評価。
  4. これを集合5まで繰り返す

調査票

Masukawa_Nao_0-1740012533157.png

 

また、各評価者には普段の甘いお菓子を食べる頻度(毎日、週56日、週34日、週12日、ほとんど食べない(週1日未満)、食べない)についても回答してもらいました。

 

上記で8つの商品から3つの商品を選ぶとしていますが、ランダムに選択してしまうとある商品が何度も評価されるといった不均等が生じます。そこで実験計画法の考え方を用い、すべての商品がバランスよく比較されるような組み合わせを設計する必要があるのです。

 

このような設計をすることでより正確に商品の重要度を測定、比較できるようになります。そのため、JMPのMaxDiff計画を用い、選択する商品の組み合わせを提示してもらいます。

 

JMPでのMaxDiff計画の作成

JMPでMaxDiff計画を作成する手順は以下のとおりです。

 

  1. 調査テーブルを開いた状態で、[実験計画(DOE)] > [消費者調査] > [MaxDiff計画] を選択。
  2. 下図のように「商品名」を [X, 説明変数]に指定し、その後、「計画のオプション」に1選択肢あたりのプロファイルの個数を3に、選択肢集合の個数を5に指定。
  3. [計画の作成] ボタンをクリック。

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1選択肢集合あたりのプロファイルの個数:1つの選択肢集合に含まれる商品の数、この例では一度に3つの商品を提示するので"3" を入力している

選択肢集合の個数:回答者に選んでもらうために提示する選択肢集合の総数、この例では、1評価者に5つの選択肢を提示するので"5"を入力している

 

すると、次のようなMaxDiff用の調査テーブルが出力されます。

Masukawa_Nao_3-1739951393676.png

 

このテーブルは、評価者1の人には次のように商品を評価してもらうことを意味します。

選択肢集合

商品(左)

商品(中央)

(右)

1

D

G

H

2

F

B

C

3

A

E

F

4

G

A

B

5

C

D

E

 

列「選択」には、評価の結果として、次の値を入力します。

 

最も好み:1、最も好みでない:-1、上記以外:0

 

この調査では「おいしさ」と「キャラメル感」を評価しているため、下図のように2つの列を作成し、値を入力します。赤枠で囲んだのは、評価者2の人がおいしさとキャラメル感を評価した結果です。(評価者2は、評価者1とは別の計画テーブルを用いています。)

 

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MaxDiff分析の結果

MaxDiff用の調査テーブルにある「MaxDiff」というスクリプトを実行すると、MaxDiffのモデルがあてはめられます。

 

以下は「おいしさ」と「キャラメル感」に対する結果です。

MaxDiff結果:各商品に対する限界効用値と周辺確率が表示されます。限界効用値が大きいほど、その商品が好ましいことを示します。周辺確率は限界効用値から計算され、該当の商品が消費者に選択される確率を示します。

尤度比検定:要因の効果を検定するための指標です。p値が小さいほど、商品の違いによって好みが有意に異なることを示します。

 

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おいしさ・キャラメル感の評価

おいしさ:E, F, D の順に評価されましたが、周辺確率を見ると大きな差は見られませんでした。尤度比検定のp値が0.5100と大きいため、商品ごとにおいしさが有意に異なるとは言えません。

キャラメル感:F, A, H の順に評価されましたが、p値は0.1028であり、おいしさの結果よりは差があるものの、有意水準0.05とすると、商品ごとにキャラメル感が有意に異なるとは言えません。

 

この結果から、8種類のキャラメルポップコーン間でおいしさやキャラメル感の明確な違いは確認できませんでした。筆者自身も試食しましたが、どれもおいしく、甲乙つけがたいと感じました。

しかし、分析の過程で次の2つの興味深い結果が得られました。

 

結果1. 甘いお菓子を食べる頻度とキャラメル感の感じ方の違い

この調査では評価者に甘いお菓子を食べる頻度を聞いていますが、この結果から以下の2つのグループに分類しました。

 

週5日以上 ⇒ 多い

週4日以下 ⇒ 少ない

 

この頻度を要因(被験者効果)に含めてキャラメル感の分析を行ったところ、要因と商品の交互作用に有意な効果(p値 < 0.05)が示されました。

 

商品を横軸、縦軸を効用値とし、頻度が少ない・多いで分けた折れ線グラフをみると、甘い菓子を食べる頻度が多い人と少ない人とで、商品によってキャラメル感の効用値に差があることがわかります。

 

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商品C:甘いお菓子をよく食べる人はキャラメル感を感じにくく、あまり食べない人は強く感じる。

商品E:甘いお菓子をよく食べる人はキャラメル感を強く感じ、あまり食べない人は弱く感じる。

 

このように、甘いお菓子の食べる頻度によって、キャラメル感の感じ方が異なるという興味深い結果が得られました。

 

結果2. 価格が高いほどおいしい

上記の結果から、各商品に対する「おいしさ」や「キャラメル感」の効用値(好ましさ)を求めることができましたので、それらと商品の1gあたりの価格との関係を分析しました。

 

各商品の価格を横軸、効用値を縦軸にしてプロットし、相関係数を求めた結果、おいしさの相関係数は約0.7と比較的高い値を示しました。

 

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※商品Hは、他の商品より内容量が非常に多いため、ここでの分析からは除外しています。

 

この結果から、「価格が高いキャラメルポップコーンほどおいしい」というもっともらしい傾向が確認されました。

 

by 増川 直裕(JMP Japan)

Naohiro Masukawa - JMP User Community

Last Modified: Feb 19, 2025 11:10 PM