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景気後退のシグナル点灯?? JMPでシグナル「サームルール」を算出し視覚化する

先週末、世界中がパリオリンピックの選手の活躍に注目していた中、アメリカでは7月の雇用統計が発表されました。今回の雇用統計では失業率が市場予想を上回り、景気後退のシグナルである「サームルール(Sahm Rule)」が点灯されたことが話題となりました。

 

サームルールとは、元FRBのクローディア・サーム氏が提唱した失業率より計算されます。具体的には、その値(パーセンテージ)が0.5を上回ると、景気後退に陥る可能性が高いとされています。

 

今回の雇用統計では、2024年7月の失業率が4.3%と発表され、サームルールによるパーセンテージが0.53となり、コロナ以降初めて0.5を上回りました。

 

Masukawa_Nao_0-1722835890787.png

 

サームルールによるパーセンテージは、月次の失業率より以下の定義で算出されます。

 

①直近3か月の失業率の平均(3か月移動平均)

②過去12か月間の3か月移動平均の最小値

 

パーセンテージ (サームルール)= ① -   ②      ( ≧  0.5   だとサームルールのシグナル点灯)

 

本ブログでは、失業率の月次データから、JMPのデータテーブルでこのパーセンテージを算出し、その値の推移をグラフで可視化してみます。

 

JMPで移動平均を算出する関数

サームルールによるパーセンテージは、次の手順で算出します。

 

  1.  "失業率(Unemployment Rate)"から " 3か月移動平均(3-Month Average)"を算出 (①)
  2.  "3か月移動平均" から "過去12か月間の3か月移動平均の最小値(Minimum of 3-Month Average in Prior 12 Months" を算出
  3. ①から②を引き算する (Percentage(Sahm Rule))

 

Masukawa_Nao_0-1722844502907.png

例として直近2024年7月のパーセンテージを算出するには、次のような手順で計算します。

 

  1. 3か月移動平均: (4 + 4.1 + 4.3) ÷ 3   = 4.13
  2. 過去12か月間の3か月移動平均(上記黄色部分)の最小値 = 3.6 (2023年7月)
  3. パーセンテージ: 4.13- 3.6   = 0.53

 

JMPの計算式を使って算出してみましょう。

 

i.の3か月移動平均は、移動平均を求める Col Moving Average() 関数を使用し、次のような計算式を指定します。

 

Masukawa_Nao_0-1722845179312.png

 

引数が多いですが、計算式エディタ上側にある?のアイコンをクリックするとヘルプが表示され、各引数の意味を確認できます。

 

Masukawa_Nao_1-1722845317543.png

 

数字の引数 1,2,0,1は、それぞれ以下の意味を持ちます。 

引数 意味
weighting 1 移動平均を求めるときの重みを1にする(過去の値に対する重みはつけない)。
before 2 2時点前までを対象にする(現時点、1時点前、2時点前の3時点の平均をとる)
after 0 現時点より後の値は対象としない
partial window is missing 1 1にすると2時点前まで値があるものを対象とする(例では1行目と2行目の値は欠測値となる)。0にすると1行目には現時点の値、2行目には現時点の値と1時点前の値の平均が入る。

 

 

ⅱの過去12か月間の3か月移動平均の最小値は、Lag(x, n) 関数を使っています。nは列xのn時点前の値を返します。ここでは1時点前から12時点前の3か月移動平均の中で最小値を求めます。

 

Masukawa_Nao_0-1722846578989.png

 

最後に、iで求めた値からiiで求めた値を引き算します。

 

2000年以降の失業率とサームルールの推移

値が求められたので、「グラフビルダー」を使って失業率(グラフ上側)、サームルールによるパーセンテージ(グラフ下側)の推移を示します。

 

Masukawa_Nao_3-1722847254717.png

 

失業率の推移をオレンジ色の折れ線で示しており、若干上昇傾向が見られますが、平滑線(赤い点線)を見ると、まだ上昇トレンドにあるとは言い難い状態です。今後も失業率が横ばいまたは上昇する場合、平滑線も上昇トレンドを形成するでしょう。

 

サームルールによるパーセンテージ(青色の棒グラフ)をみると、2000年代では過去に3回ほど大きな山が見られます。これらの山は、2001年頃のITバブル、2008年頃のリーマンショック、2020年のコロナショックが主な原因です。

 

コロナショックは除くと、直近(2023年~2024年7月)では、ITバブル、リーマンショックのときのような山が形成されつつあるように見えてしまいます。

 

果たして、景気は後退局面に入るのでしょうか。ちなみに、次月の発表(2024年8月の失業率)が3.9%であれば、パーセンテージは0.47となり、0.5を下回ります。

 

Masukawa_Nao_4-1722847954892.png

 

急にそこまで失業率が下がる可能性は低い気がしますが、今後も景気シグナルであるサームルールを注視しておくと良いでしょう。

 

 

データの出典:Unemployment Rate (UNRATE) | FRED | St. Louis Fed (stlouisfed.org)

 

by 増川 直裕(JMP Japan)

Naohiro Masukawa - JMP User Community

 

Last Modified: Aug 5, 2024 5:39 AM