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Naohiro Masukawa

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共変量を変化させたときの薬物動態モデルの考察

下図は、12人の患者に特定の薬剤を投与した際の薬物濃度の時間経過を示す折れ線グラフです。薬物は投与後に体内で吸収され、濃度が急激に上昇した後、分布や代謝によって濃度が緩やかに低下します。このグラフは、薬物動態の基本的なパターンを示しています。

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患者ごとの折れ線を観察すると、濃度の変化に個人差が見られます。この差異は通常、薬物の種類、投与経路、患者個々の特性(例:体重や代謝能力)などによるものです。

 

例えば、体重が大きい患者では分布容積が増加し、最大濃度(Cmax)が低くなる可能性があります。また、投与量や薬剤の種類によっても濃度推移が変化することがあります。

 

これら、薬物動態に影響を及ぼす可能性がある要素は「共変量」と呼ばれ、共変量の違いによって薬物濃度はどのように影響を及ぼすかを解析することがあります。

 

本ブログでは、JMP(JMP Pro) の「曲線のあてはめ」プラットフォームを使用して、患者の体重、投与量、投与薬剤を共変量*として設定し、それらが薬物動態に与える影響を解析する方法をご紹介します。

 

*「薬剤」は共変量とはみなさないケースもありますが、ここでは、薬剤の種類が薬物動態に影響を及ぼす可能性があると考え、共変量とみなします。

 

使用するデータの概要と共変量

今回の解析に使用するデータは、12人の患者に対し、投与後の薬物濃度(Concentration)を複数の時点で測定したものです。さらに、各患者について共変量として投与薬剤(Drug)、体重(Weight)、投与量(Dose)の情報を記録しています。

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以下の棒グラフは、患者ごとの投与量と体重を示したものです。患者ID 1~6には薬剤A、7~12には薬剤Bが投与されており、投与量および体重には患者間で差があることがわかります。

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分析手順

JMPの「曲線のあてはめ」は、パラメータに対し非線形なモデルをあてはめることができるプラットフォームです。以下の手順で薬物動態モデルを解析します。

 

① 薬物動態パラメータの推定:各患者に「1コンパートメント 経口投与」モデルをあてはめ、3つのパラメータ「AUC(曲面下面積)」、「消失速度」、「吸収速度」を推定

② パラメータと共変量の関係をモデル化:推定したパラメータを目的変数、体重、投与量、薬剤を説明変数とする回帰分析を実施(変数選択あり)

➂ 共変量とモデルの関係を探索:共変量(体重、投与量、薬剤)が時間と薬物濃度の関係に与える影響を可視化

 

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非線形モデルのあてはめから、共変量と薬物動態の関係の探索まで

薬物動態パラメータの推定

JMPでの操作手順は以下の通りです。

 

[分析] > [発展的なモデル] > [曲線のあてはめ] を選択し、列の役割を指定します。共変量である体重、投与量、薬剤は「追加変数」に設定します。

Masukawa_Nao_4-1737427092486.png

 

次に、レポートのオプションとして [薬物動態モデル] > [1コンパートメント経口投与] を指定します。これにより、各患者に対するモデルの適用結果が表示され、薬物動態パラメータ(AUC、消失速度、吸収速度)が推定され、あてはめた「プロット」が表示されます。

Masukawa_Nao_5-1737427153519.png

 

レポートには予測のモデル式と、各患者に対するパラメータ(AUC、消失速度、吸収速度)の推定値が表示されます。JMPでは、以下の「予測モデル」に示した式で1コンパートメントモデルを定式化しており、このときaはAUC(曲面下面積)、bは消失速度、cは吸収速度を示します。

 

Masukawa_Nao_6-1737427254138.png

 

ここで実施したことは、各患者の薬物動態に対し1コンパートメントモデルをあてはめ、患者の薬物動態に対する特性である3つのパラメータ(AUC、消失速度、吸収速度)を抽出したともいえます。

 

② パラメータと共変量の関係をモデル化

あてはめたモデルに対し、オプション [パラメータテーブルの作成] を指定すると、次のようなテーブルが出力されます。

Masukawa_Nao_0-1737435439331.png

 

推定されたパラメータを目的変数、共変量(体重、投与量、薬剤)を説明変数とする回帰モデルを構築します。この過程では、JMP Proの「曲線実験計画分析」を用いて変数選択を行い、適切なモデルを選びます。

 

※この後の分析は、JMP Proでのみ実施できます。

 

あてはめたモデルのオプション [曲線実験計画分析] を実行します。すると、パラメータAUC、消失速度、吸収速度のそれぞれについて、「追加変数」に指定した体重、投与量、薬剤で説明するモデルがあてはめられます。その際、2次のモデルから「総あたり法」による変数選択をおこない、予測に役立つ項が選択されます。

 

回帰分析の詳細は、レポート「モデルパラメータに対する一般化回帰」に表示されます。

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➂ 共変量とモデルの関係を探索

手順②で求めたモデルが組み合わされ、薬物動態の時間における推移(プロファイル)が追加変数の関数として定式化されます。

 

レポート「曲線実験計画プロファイル」では、追加変数の値を変更することで、時間と薬物濃度との関係がどのように変化するのかを探索できます。例えば、体重70、投与量4.5、Aの薬剤を使用している患者の場合、時間と薬物濃度の関係は黄色で塗りつぶされたプロファイルとして示されます。

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共変量の値を変更した場合の以下のプロファイルでは、ピークとなる時間が遅くなり、ピーク時の薬物濃度が低下することが確認できます。

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さらに、共変量の値をさまざまに変更した際のプロファイルの変化を動画として記録しました。共変量の変化によって、黄色のプロファイルの形状がどのように変わるかを視覚的に確認できます。

(view in My Videos)

 

まとめ

この解析では、12人の患者データを使って、薬物濃度の時間推移を観察しました。

さらに、JMP Proの「曲線のあてはめ」機能を活用し、共変量である「体重」や「投与量」、「薬剤の種類」と薬物動態の関係を調べることができました。

 

by 増川 直裕(JMP Japan)

Naohiro Masukawa - JMP User Community

 

Last Modified: Jan 22, 2025 3:12 AM