レベル:初級
製薬業界の非臨床試験では、薬剤の用量を複数設定した試験での効果を仮説検定で証明する場面が多く、第1種の過誤を厳密に制御するために多重比較が必須となっている。とりわけ、対照群と複数の薬剤用量群との比較のためにDunnett多重比較法が汎用されているが、対照群と各用量の比較を一斉に行うために群数を多く設定した試験では検出力が低下する問題点がある。
Williams多重比較法は、薬剤効果に用量依存性(単調性)がある場合に適用し、高用量群から閉手順で逐次検定を実施するため、2群のt検定と比較してもほとんど検出力が低下しない魅力的な多重比較手法であるが、残念ながらJMPには現時点で搭載されていない。
そこで、JSLを用いてWilliamsの方法に基づき高用量群から閉手順で逐次検定を実施し、算出した統計量を成書のWilliams多重比較用の統計数値表と比較して有意差の有無を出力するアドイン開発を進めている。また、ノンパラメトリック版であるShirley-Williams多重比較法も搭載を計画している。発表ではプロトタイプのデモを含めてアドインの機能を紹介する。
株式会社タクミインフォメーションテクノロジーにて昨年より製薬関連の非臨床向けビジネスを担当しているシステムエンジニア。非臨床部門向けの統計解析ソフトウェアの開発および統計セミナー講師・コンサルティングに従事している。
製薬企業の薬理部門にてin vitroおよびin vivoの薬効薬理試験に長年従事し、製造販売承認申請を経験。2007年にグループ企業の研究管理部門に転籍し非臨床の統計解析を担当した際に、芳賀敏郎先生・高橋行雄先生等にJMPを教えていただき、現在に至る。最近はJMPのスクリプト言語(JSL)を用いた開発を主に担当しており、JMP機能を拡張する非臨床向けアドインのシリーズ化を計画している。