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Naohiro Masukawa

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婚姻件数の増加は、いつ出生数に表れるのか?  ~相関で見る婚姻と出生のタイムラグ~

近年「出生数が過去最低を更新」というニュースをよく耳にするようになりました。日本の未来を考えると、働き手の問題など憂慮すべき事項となっています。

当然ながら、子どもが生まれることは結婚と大きく関係しています。結婚する数(婚姻件数)が増えれば、出生数も増えることが期待できます。

下のグラフ(図1)は、2000年から2025年の日本の婚姻件数と出生数の推移です。どちらも長い間減少傾向が続いていることがわかります。

図1: 婚姻件数と出生数の推移(年次、2000年~2025年)図1: 婚姻件数と出生数の推移(年次、2000年~2025年)

もう一度、上記グラフの右側部分をご覧ください。婚姻件数は2024年、2025年と2年続けて増加していることがわかります。結婚してから子どもが生まれると考えれば、今後出生数が持ち直すことがあるかもしれません。

 

そこで、本記事では、婚姻件数と出生数の相関を調べることにより、次の2点を確かめてみます。

  • 婚姻件数が増えると、出生数が増えるかどうか
  • 増えるとしたら、結婚から何か月後ぐらいに出生に反映されるのか

 

調べてみると、何となくしっくりくる結果が得られました。分析では「相互相関」という手法で関連性を調べており、この相関をJMPで算出する方法も紹介します。

 

相互相関とは

相互相関とは、2つのデータ系列のうち一方の時点をずらしながら相関係数を計算する方法です。

どれぐらい時点をずらすと、双方がよく似た動きになるのかを相関係数の大きさで判断し、時間のずれ(ラグ)を調べることができます。

次の例(図2)は、2つの系列「系列X」(青実線)、「系列Y」(赤実線)を折れ線でプロットしたものです。また系列Xを12時間右にずらした系列を青点線で示しています。図の通り、系列Xを12時間後ろ(右)にずらすと、系列Yとほぼ重なります。

図2: 片方の系列をずらす例図2: 片方の系列をずらす例

つまりこの例は、系列Xの動きが12時間遅れて系列Yに現れている例となります。このように一方の系列を12時点ずらして相関をとることを、「ラグ12の相関」を見るといいます。

本記事では、婚姻と出生を扱いますが、原因が遅れて結果に反映されるという例はいくつもあります。例えば次のような広告の効果、製造プロセスなどが挙げられます。

 

広告の効果:広告を出してから数週間後に売上が伸びるか。

製造プロセス:炉に送るメタンガスの量を変えると、少し遅れて排ガス中の二酸化炭素の濃度が変わるか。(JMPのサンプルデータ「SeriesJ.jmp」の例)

 

使用データ

この後の分析では、厚生労働省「人口動態調査」の月ごとの婚姻件数と出生数を扱います(図3)。

期間:2000年1月~2026年5月(月次)

図3:使用データとグラフ図3:使用データとグラフ

注意:2024年12月までは確定数、2025年1月以降は月報(概数)を用いています。これら2つの数は若干の差がありますが、現在では、2025年以降の月ごとの確定数は公表されていないため、今回はこの2つをつなげて使います。

 

前年同月比に変換

では、婚姻件数と出生数について、何か月後に相関が高くなる(関係が強くなる)かを、相互相関を算出することで調べていきます。

ただし、婚姻件数と出生数をそのまま使って相互相関をとると、トレンドや季節性が悪さをします。

トレンド:どちらも長く減り続けているので、本当の関係がなくても、どのラグでも見かけ上相関が高くなります。

季節性:婚姻は3月、11月に多く、出生は7~10月に多いなど、月ごとに増減の状況が両者で違っています(図4参照)。このような季節のパターンがあると、相互相関に12か月周期の波が現れ、本来の関係が見えにくくなります。

 

図4: 月別の婚姻件数・出生数の平均図4: 月別の婚姻件数・出生数の平均

 

そのため、どちらも前年同月比(%)に変換してから相関をとることにします。

JMPで前年同月比を求めるのであれば、次のような計算式(図5)を作成します。Lag(出生数, 12)は12か月前、つまり前年の同じ月の出生数を求めています。

図5: 出生数に対する前年同月比の計算式図5: 出生数に対する前年同月比の計算式

これにより、前年の同じ月と比べることになるので、トレンドと季節性の大部分を取り除くことができます(図6)。

図6:婚姻件数・出生数の前年同月比の推移図6:婚姻件数・出生数の前年同月比の推移

 

JMPで相互相関の算出

JMPでは、「時系列分析」のプラットフォームで2つの系列の相互相関を求めることができます。

今回の例では、以下の図7のように [入力系列リスト]に「婚姻件数_前年同月比」を、[Y,時系列]に「出生数_前年同月比」を指定します。入力系列を指定すると、「伝達関数分析」というレポートが表示されます。

さらに、今回は4年分のラグを調べてみたいので、「自己相関ラグ」として「48」(か月)を指定します。

図7: 時系列分析の起動ウィンドウ図7: 時系列分析の起動ウィンドウ

表示されるレポートの左上の赤い三角ボタンから [相互相関]を選択します。

すると、次のように「相互相関プロット」のレポートが表示されます。このレポートは、ラグごとに相互相関を求め、その値を棒グラフにしたものです。グラフの青色の帯は相関を見る目安となり、この幅より棒がはみ出ていれば、偶然ではない相関があると考えます。

図8: 前年同月比の相互相関プロット図8: 前年同月比の相互相関プロット

ただこの結果だけでは、2つの関係をはっきり捉えることができないため、次の白色化という処理を行います。

 

注意:相互相関は、通常の相関係数と多少計算方法が異なります。通常の相関係数では、ずらした後に重なっている部分だけで平均やばらつきを計算します。一方で相互相関では、平均とばらつきは全期間の値をそのまま使い、合計をデータ数nで割り算して求めます。

 

白色化

前年同月比で考えても、まだ問題があるのです。以下の図9は、出生数_前年同月比の自己相関と偏自己相関を求めたものです。

図9:出生数の自己相関・偏自己相関図9:出生数の自己相関・偏自己相関

自己相関:何か月前の自身との相関

偏自己相関:間の月の影響を除いた、その月との直接の相関

 

偏自己相関を参照すると、ラグ1だけが0.63と大きくなっていることから、主にとなりどうしの月の相関が高いことを示しています。

このようにとなりどうしが似ているデータでそのまま相互相関をとると、グラフの山がなだらかに広がってしまい、どれぐらいずらすと関係が強くなるのかがわからなくなることがあります。

 

そこで白色化という手法を用います。この例で白色化を使うと、入力に指定した婚姻件数_前年同月比から、過去の値から予想できる部分を取り除き、予想できなかった動きを取り出すことができます。

 

JMPで実施できる白色化は、入力系列にARIMAモデルという時系列のモデルをあてはめ、その残差がホワイトノイズ(となりどうしの値に関係がない、ランダムな変動)とみなせるようにします。さらに、入力系列にあてはめたものと同じモデル(同じ係数)を使って、出力系列にも同じ変換をします。

 

JMPで白色化を実施するには、先ほどのレポートに対し、入力系列パネルにある赤い三角ボタンから[白色化]を選択します。その後、白色化のための次数を指定するウィンドウ(図10)が表示されますが、今回は、「p,自己回帰次数」を12として推定を行います。

図10: 白色化の次数を設定図10: 白色化の次数を設定

これにより自己回帰(自身の過去の値を説明変数として回帰する手法)において、12か月前までの値を予測に使うことにしています。

 

白色化の結果

前節の操作で、「白色化プロット」のレポート(図11)を表示できます。

このレポートでは、左から順に白色化後の相関、残差の自己相関、残差の偏自己相関のプロットが表示されます。

残差の自己相関を見ると、ほとんどのラグで、青い線の内側に収まっていることがわかります。これは、白色化によって、先ほど示したようにとなりどうしが似ている部分をほぼ取り除けたことを示しています。

図11: 白色化のレポート(残差の自己相関・偏自己相関)図11: 白色化のレポート(残差の自己相関・偏自己相関)

 

白色化後の相互相関をグラフビルダーで横軸をラグとして表したものを示します(図12)。これを見ると、グラフで強調表示したように、ラグ5~10で1つ目の山が現れ、ラグ21~28で2つ目の山が現れていることがわかります。

図12:白色化後の相互相関(ラグ-48~48)図12:白色化後の相互相関(ラグ-48~48)

すなわち、婚姻件数が前年同月より増えると、その約半年後と約2年後に、出生数も前年同月より増える傾向(ただし弱い傾向)があることを示しています。

 

考察とまとめ

ここで得られた約半年後と約2年後という結果は、何となくそんな感じがするなと思えるものです。実際、厚生労働省が公表している「令和3年度 出生に関する統計」の結果とも整合しています。

 

  • 第1子の出生を見ると、結婚6か月で出生が最多となっています。これはいわゆる授かり婚を示しており、1つ目の山(ラグ5~10)の結果と合っています。
  • 結婚から第1子出生までの平均期間は2.45年です。あくまで平均なので、結婚2年後に出生が多いことまではわかりませんが、2つ目の山(ラグ21~28)はこの付近にあります。

 

ただし、白色化後の相関係数は、一番大きいところでもせいぜい0.16程度です。そのため結果を考察するときには注意が必要になります。

また、婚姻が増えれば、その数だけ出生が増えるという単純な関係ではなく、出生数には経済状況、社会政策、第2子・第3子の状況なども関係してきます。

さらに、相関関係は因果関係ではないので、ここでわかるのは、婚姻の動きから少し遅れて、出生も似た動きをしていることだけです。

それでも、資料の情報や実感から納得いく結果が得られたと考えて良いのかもしれません。

 

今回の結果から考えると、2024年、2025年の婚姻件数の増加は、その半年後や2年後あたりに出生数を増やすまではいかないにしても、下落幅を抑える効果があるのかもしれません。

今後公表される出生数がどのように変化していくのか、引き続き注目していきたいところです。

 

by 増川 直裕(JMP Japan)

Naohiro Masukawa - JMP User Community

Last Modified: Oct 8, 2026 9:16 PM