岸本 淳司 氏
九州大学病院 ARO次世代医療センター 准教授
JMPとの出会い
1989年4月10日に、サンフランシスコで開催されたSUGI(SAS User's Group International)に参加した際、John SallによるJMPの発表に立ち会ったのが、JMPとの出会いです。
私の意外な一面
医学部で統計学を教えていますが、実は文学部出身です。趣味は、飛行機に乗って旅行するのがマイブームで、ANAとJALが定期便を就航させているすべての日本の空港に行きました。
また、私はずっと大学に残っていたわけではなく、昔はSAS社に在籍していて統計解析のテクニカルサポートを担当していました。在職中にJohn Sallが来日したことがあり、一緒に富士山に登ったこともあります。
1.JMPの機能で最も気に入っているものは?
コンセプトが素晴らしいと思っています。現在、大学でパス図の描き方を教えることがありますが、この描き方を理解すると、さまざまな統計手法を俯瞰的に理解できるようになります。そのような設計思想になっているところが好きです。
JMPの場合は「Fit Y by X」(二変量の関係:Xが原因でYの振る舞いを説明する)というプラットフォームがあって、そこでは応答変数が質的変数なのか量的変数なのかによって最適な手法が自動的に選ばれるところが気に入っています。
2.初めての仕事は何でしたか?
大学院生の頃、大型計算機センターでSASによる統計解析をサポートするアルバイトをしていました。
3.統計に関心をもったきっかけは何でしたか?
大学1年の前期に線形代数のテストがあって、連立一次方程式を掃き出し法と逆行列を使う方法とCramerの公式の3通りで解けという問題が出ました。手計算で解いたら、全部違う答えになってしまいました(笑)。その時、このような計算を人間にさせてはいけないと思いました。
その年度の後期に、統計学の授業がありました。ある日先生が分散分析の計算問題を黒板に書いて教室を出ていこうとされました。当時パソコンは普及していなかったのですが、私はプログラム電卓を持っていて、先生が問題を書き終わると同時に答えを言ったのです。先生は大層驚かれていました。そんなことで統計の計算をコンピュータでさせるのが面白いと思ったのです。
4.プロフェッショナルとして、最も誇らしく感じた瞬間は?
いま私は医師が行う研究のコンサルティングをメインに行っています。その中で論文の査読対策を頼まれることもあります。査読者のコメントは相当高度なものもありますが、その本質をちゃんと理解してもらえるよう説明し、具体的方法を提示します。その後お会いしたとき、「おかげさまで論文が通りました。ありがとうございます。」と感謝されると、たいへんうれしく、また誇らしく感じます。
5.仕事のどの部分が好きですか?
コンサルティングでは、医学の専門家が私に全身全霊を込めて説明してくださり、私もそれに一生懸命応えるという全力のぶつかり合いを行っています。そういうところが、この仕事の一番好きな点です。
6.最近JMPをどのように活用していますか?
大学での統計教育です。JMPはintuitive(直感的)な操作ができる点がとても素晴らしいです。最近のJMPは多機能になっていますが、私は初期の頃から、「Fit Y by X」(二変量の関係)のプラットフォームを重宝しています。医学では、原因と結果の関係を探りたいのです。JMPなら操作が簡単で、原因の変数を選択して、結果を指定するだけで解析ができます。だから、私は解釈の仕方を中心に教えればよいのです。
7.JMPを用いた最初のプロジェクトは何でしたか?
1996年に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスで「多変量解析」という講義を担当しました。それまで不人気科目だった統計学を教えるにあたり、当時販売が始まったばかりで、JMP IN(JMPの学生バージョン)が付録としてついていた『JMP Start Statistics』という本を教科書に指定し、「学生が自分でデータを集め、自分で解析する」という授業スタイルを採用しました。そこに学生が共感してくれたのか、嬉しいことにその講義は学生による評価で1位を取ることができました。翌年にはデータ分析の授業が4クラス平行開催、その次の年に8クラスとなり、湘南藤沢キャンパスのほぼすべての学生が取る授業に成長しました。
8.JMPの開発者や、John Sallに何か伝えたいことはありますか?
私はJMPが好きで、JMPの新しい機能については、「お気に入りの作家が新作を書くのを待っている」ような気持ちでいます。新しい機能が追加されるたびに、「おお、今回はその手で来たか」という新鮮な驚きを覚えます。たとえば、JMP 15では共分散構造分析がついに使えるようになり、とてもうれしく思いました。私は、JMPは常にup to dateな存在であって欲しいと思っています。その時点の技術でできることを実現して欲しいと考えています。
9.将来的に、データサイエンスやアナリティクスの分野は、どのように変化すると思いますか?
将来、何が主流になるかは分かりません。ただ、データサイエンスもアナリティクスも「役に立つ存在」であって欲しいと願っています。日本では方法論を重視しがちですが、データサイエンスもアナリティクスも現場の研究者の役に立って欲しい。私は、それがアナリティクスのあるべき姿だと思っています。
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