三井 正 氏
東芝半導体サービス&サポート株式会社 データサイエンス推進グループ長
JMPユーザー歴:
1994年から
私の意外な一面:
家具作りなどの木工作業全般が趣味です。特にWood Carvingは本格的に取り組んでいるので、作品を紹介させてください。 私の作品は自然の木の特性を活かして色を塗らずに仕上げるのが特徴です。 これはLoon(和名:ハシグロアビ)の親子をモチーフにした小物入れです。雛が蓋になっていて、その中に腕時計が入れられるようになっています。
1.近況についてお話しいただけますか?
ここ数年は、半導体の研究開発の場でJMPを「使う」立場から、コンサルタントとしてJMPを使った実験計画を「教える」立場へと緩やかに移行していました。今までは関連会社内での活動を主体としていましたが、更に多くの技術者にJMPの楽しみを知ってもらうために、昨年『JMPではじめるデータサイエンス』(オーム社)を上梓しました。今後はもっと自由な立場で活動していく予定なので、JMPユーザーと直接お話しする機会が増えることを楽しみにしています。
2.JMPの機能で最も気に入っているものは?
JMPには、とにかく使っているだけでも楽しかったという初期のMacのDNAが残っています。統計ソフトとしてそれだけでも十分満足していますが、数ある機能の中で1つだけあげるならば「パーティション」が気に入っています。対話的とはかくあるべきという見本として、JMPの基本コンセプトを体感できる素晴らしい機能です。
3.初めての仕事は何でしたか?
東芝の府中工場で、イオンビームを使った超高真空分析装置の開発に従事していました。装置の設計だけでなく、製造・販売も手がけるグループだったので、イオン光学系のシミュレーションから装置の板金加工や営業回り、展示会の説明員まで何でもやりました。今になっては、とても良い経験になりました。
4.JMPに関心を持ったきっかけは何でしたか?
その後、半導体の研究開発の場で新しい計測技術を開発し、ユーザーに提供する立場に異動します。そこでは、計測装置の性能を向上するために、以前からMATLABを使った計測データの分析を手がけてはいました。あるとき、装置性能の向上だけでなく、その装置をユーザーにうまく使ってもらうかまでケアしなければならないと思い立ったのです。当時からMacユーザーであった私がJMPに巡り合うのには時間はかかりませんでした。
5.プロフェッショナルとして、最も誇らしく感じた瞬間は?
自分の開発した計測システムが実際に量産工場に展開できたときです。詳しいことは書けないのですが、分散コンピューティングを実装したWEBアプリケーションとして今でも通用するコンセプトだったと思っています。関連特許もたくさん書くことができました。
6.仕事のどの部分が好きですか?
コンサルタントとしての体験でお話ししますと、やはり技術者に喜んでもらえることです。ある製品の欠陥問題に取り組んで成功した事例では「今まで何年も解決できなかった問題が片付いて、これで他の仕事にとりかかれます。」と言われて、ともに苦労して良かったと思いました。
7.最近JMPをどのように活用していますか?
コンサルタント業務としては、何と言っても「実験計画」に大変お世話になっています。それ以外にも、最近はJMPを使って統計学を教えることに取り組んでいるところです。特に、ヘルプメニューの「サンプルデータ」にある「教育用スクリプト」には優れた教育用のスクリプトが多くあるので、大変役立っています。そのうちのいくつかは、拙著でも紹介していますので、興味ある方は参考にしてください.
8.JMPを用いた最初のプロジェクトは何でしたか?
JMPが直接業務に役立ったのは1990年の後半でした。あれから20年以上経ってしまったことになりますが、当時、私はアメリカのバージニア州にある半導体の量産工場で計測装置を担当していました。半導体の製品はロット、ウェハ、チップと層別化されているという特徴があります。そこで、量産計測データを分散分析して、製品ごとに問題点を洗い出すことができました。
9.JMPの開発者や、John Sallに何か伝えたいことはありますか?
Mac OSがiOSライクに変貌を遂げているように、JMPもMacのDNAを残しつつ、これからも進化し続けてください。個人的には、私のようにコンサルタントとしてJMPを間接的に使う立場の者の意見も取り込んでいただけたらと思っています。例えば「ジャーナル」にはお願いしたい改良がいろいろあります。
10.将来的に、データサイエンスやアナリティクスの分野は、どのように変化すると思いますか?
お金が儲かるということが周知されてきたこともあって、現在多くの企業がこの分野に注目しています。とはいえ、表計算やワープロといったPCソフトの普及を顧みれば、このダイナミックな変革の後に来るのは常態化です。そこでは、データサイエンスを知っているのは当たり前で、自らの知見と融合して行動を起こせるスキルが何よりも重要になっていくでしょう。