進行乳癌における病態因子に基づく症例の層別化とその臨床的意義
【背景】進行乳癌患者は治療が進むにつれて多様な症状の制御が課題となる。これらの症状には転移臓器の障害のみでは説明できないものが存在する。
【目的】進行乳癌患者に見られる症状の背景にある病態因子を特定し、症例を層別化して臨床的意義を検討する。
【方法】2005~2018年にがん研有明病院で進行乳癌と診断され死亡した症例を対象に後向き観察研究を実施。因子分析と階層型クラスター分析を行い各クラスターの予後をKaplan-Meier法で比較した。
【結果】466例から7つの因子を抽出し8つのクラスターに分類した。C3(n=98)とC5(n=79)は多様な転移臓器の組み合わせを持った。C8(n=19)は肝または骨転移が特徴で42%は骨転移のみ認めた。C8が最も予後が悪い傾向を示した(p=0.068)。C8はホルモン受容体陽性乳癌が多く(69%)、C5はトリプルネガティブ乳癌の割合が高かった(41%)。
【結論】症状や病態に基づき症例を層別化しクラスター毎に予後の違いや病態の特徴を示した。特定のクラスターは転移臓器の障害のみでは説明できない特徴的な病態を持つため、詳細な検討が必要である。