応答曲面法およびブースティングツリーを活用した錠剤の製剤設計
富山大学大学院 医学薬学教育部(薬学) 製剤設計学講座 客員助教 林 祥弘
富山大学大学院 医学薬学教育部(薬学) 製剤設計学講座 客員教授 大貫 義則
錠剤に含まれる原薬の物性は錠剤の品質に大きな影響を及ぼすため、錠剤の製剤設計において原薬物性-錠剤物性間の関係を明確化することが重要である。しかしながら、原薬の性質を把握するためには多角的に物性を評価する必要がある上、各物性間で相乗効果・拮抗効果が発生する複雑系となっている。そのため、原薬物性と錠剤物性の関係を理解するためには統計解析の活用が有用である。本講演では、応答曲面法およびブースティングツリーを製剤設計に応用した2つの研究事例を紹介する。
1. 原薬配合錠とプラセボ錠の応答曲面の関連性評価
実験計画法に従い添加剤配合比率の異なる数種類の錠剤を調製し、錠剤硬度および崩壊時間の応答曲面を作成した。そして、各応答曲面を定量的に比較した結果、原薬配合錠とプラセボ配合錠の応答曲面に相関性のあることを見出した。この結果を応用し、プラセボ配合錠のデータを活用することで、限られた実験点から原薬配合錠の応答曲面を推定できる可能性を示した。
2. ブースティングツリーによる原薬物性と錠剤物性の関連性評価
81種類の原薬について様々な原薬物性(分子量、分配係数、粒度分布、かさ密度、Hausner比、水分量、弾性回復率など)を評価した。そして、JMP Proに搭載されている機械学習機能の1つであるブースティングツリーを適用することで、原薬物性と錠剤硬度の関係を高精度にモデル化した。本研究では、重要な原薬物性を明確化する上でブースティングツリーが有用な手法であることを示した。