SAS Institue Japan株式会社 JMPジャパン事業部でシニアテスターをしています小野と申します.
私自身,「HF/LF比」というものをご質問で初めて知った状況ですので,かなり曖昧な回答になります.
基本的には,HF/LF比の計算はJMPの標準機能で提供されておらず,かつ,プログラミングの関数でも用意されていない処理をしなければいけないので,JMPでやろうとするとかなり面倒だと思います.
まず,JMPもしくはJMP Pro(以降,まとめて"JMP"と述べます)でマウス操作もしくは1つの関数だけによって,RR間隔データからストレス指標であるHF/LF比を計算するようなものはありません.なお,JMP Student Editionは,JMP Proの機能を持ち合わせています.他にも例えばBMIの計算などもJMPではGUIで提供されていないのですが,そのような標準提供されていない計算をJMPで行おうとする場合,自分でプログラミングする必要があります.
(今回の「HF/LF比」計算を行うアドインはないのですが,JMP Marketplaceというサイト(https://marketplace.jmp.com/ja)に,「アドイン」という機能を用いた,現状有姿での提供の無料プログラムがいくつか公開されています.)
HF/LF比をJMPで計算するとしたら,次のような方法でプログラミングする(自分でコードを書く)必要があります.
- JSL (JMPスクリプト言語; JMP Scripting Language)というJMP専用の言語でプログラミングする.
- JMP内にて,(JMP 18以降の)Pythonのコードでプログラミングする.
RR間隔データからHF/LF比を計算する際には,いくつかの処理方法や計算方法があります.すでにどれがいいのか定番の方法もあるのかもしれませんが,ChatGptにて,以下のプロンプトで尋ねたところ,いくつかの論文が紹介されました.
「RR間隔からLF/HF比を求めるのに,(a) 等間隔データにするために線形補間やスプライン補完などをする,(b) 周波数領域でのパワーを求めるのに,そのままの値を用いるか,滑らかにするか,また,(c)最終的にパワースペクトルをどう数値積分するか,といったところでいろいろな手法が考えられます.これらを比較して検討した論文はありますか?」
以上のプロンプトへの論文の中で簡単な計算方法(例えば,線形補間により等間隔データを作り,生の高速Fourier変換を行い,台形法則で積分布する)は,JSLでもいくつか関数が用意されています(線形補間はInterpolate関数, 高速Fourier変換はFFTで行えます).しかし,その他の処理はJMPでは特に関数が用意されておらず,その部分を自分でスクラッチで記述する必要があります.どの計算方法が良いのかが分からない場合には,いずれの方法も試して結果が変わらないことを示した方がいいと思いますので,JMPのJSLで記述するのは手間がかかると思います.
以上のような計算する上で考慮すべき細かいこと以外にも,そもそもLF/HF比そのものが妥当な指標か推定対象にマッチしたものかどうかをまずは考慮すべきかもしれません.(時間領域だけでなく)周波数領域でも現実の心電図データを眺めてきた専門家の意見を聞くのが早いのではないかと思います(周波数領域でのデータの解釈がわからず,いずれかの何かしらの方法でLF/HF比を求めただけだと,計算が正しいかなども含めて不安が残るかもしれません.)
(なお,ARIMAモデルをあてはめてそのパワースペクトル密度を見るのであれば,「時系列分析」プラットフォームで行えます.ただし,このプラットフォームはLFパワー,HFパワー,LF/HF比などはまったく計算しません.)
前向きな良い答えじゃなくて申し訳ないのですが,何か不明な点などがありましたらご返信ください.
Yusuke Ono (Senior Tester at JMP Japan)