レベル:初級
発生が継続的であるが周期がなく規模が予測できない事象を分類する試みである.中学校英語教科書(全6点)の主要文法事項36項目を対象とし,導入時以降の出現頻度を追跡した.これらの文法事項は課毎に頻度を計測してもその傾向の一般化は全く不可能であり,況んや共通の基準で比較することはできない.本研究では累積度数の分布に3次曲線を回帰させることにより,その曲線の1次・2次・3次項係数及び切片を当該項目を説明する新たな変数として同定した.それらの変数を以て全項目の因子分析を行い,因子得点を2次元上に布置させて出現のパターンを得た.1つは凸型累積分布で,該当する項目は主として導入時に頻発するがその後は出現が低減する.他の1つは凹型累積分布で,導入時以降次第に出現頻度が増加する.これには初級段階で導入される高頻度事項(定冠詞・過去時制など普遍的項目)が多く該当し,学習の進展と共に自然な英文に近づいて行くことが想定される.項目毎に教科書間の布置を見ると,多くの項目で教科書が狭い範囲に集中しているか,あるいは原点からの直線に沿って並んでおり,凸型対凹型という分類基準は本対象の基本的説明要因であることが判明した.
言語学習及び言語測定に関わる課題を多変量解析を中心とする統計手法で分析し,教育プログラムへの提言を行ってきた.近著として,行列を用いた並べ替え問題の部分採点法に関する論文(IntechOpen社,2022年5月刊)がある.同論文の前段階の研究は ICICT 2019(ハワイ)にてベストプレゼンテーション賞を授与された.JMP はバージョン2からのユーザーで,多変量解析勉強会とともに多くのことを学ばせて頂いた.